人生初の南アルプス。
関西からのアクセスの悪さでなかなか縁のなかった山域。
どうせ行くなら!と百名山は4座巡り、さらには黒戸尾根も登る・・・。
そんなルートを2泊3日で歩いてきました。
0日目
9月初旬。
まだまだ蒸し暑さを感じるが、一度台風が過ぎ去ったあとなので少し秋っぽい空気感。

前夜に登山口まで移動
実は、昨年も同時期に南アルプスの山行を計画しながらも台風によって中止に。
その時は6泊7日大縦走の計画。
今思えば、よく休みが取れたものだ。
その後も結局縁がなく、一年間待ちに待った南アルプス。
今回は、黒戸尾根を登り甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳を通って広河原へ下山。周回するようなルートを計画した。
1日目
7:00尾白川渓谷駐車場スタート。

橋を渡るとすぐに急登が始まる。
ここからは樹林帯の尾根道をひたすら登っていく。
数日前と比べればかなり涼しいはずだが、暑い。汗が止まらない。
日本三大急登の一つ、黒戸尾根。
日本三大とか言われるとちょっと不安だったが、所々トラバース気味に巻道があったり意外と歩きやすい。
フラットな道があると足も休めるのでありがたい。
こんなかわいい祠も
途中、開けたポイントからは八ヶ岳が見える。
少し雲はあるけど、いい天気。
核心部
三大急登にビビっていたが、そこまで身構えなくても大丈夫だったかもなー。
なんて思っていたら、五合目から先は鎖場の連続。
五合目小屋跡
ほぼ垂直の岩肌に取り付けられた梯子を登ったり、足の置き場が分かりにくい鎖場をトラバースしたり、一気に修験道らしい雰囲気に。
11:30 七丈小屋到着。
もうメリノウールのベースレイヤーと長ズボンは汗で水没状態。稜線上の気温帯に合わせていたので完全にウェアの選択ミス。
さらに、山頂まで標高差500m以上は登らないといけない。
小休止。山頂へ行って降りてきた方達とすれ違う。
トレランやファストパッキングスタイルの方もちらほら。日帰りで黒戸尾根をピストンするらしい。健脚な人はすごい。
小屋番の方と話していると、昨日は皆既月食だったので、夜間に山頂へ行って見てきた方もいたとか。みんな色々考えるなぁ。
七丈小屋のテンバ
キューベンのワンポールシェルター、かっこいいなー
まだまだ続く垂直の鎖場。
結構足にきていたのでゆっくり歩いていたら、ものすごいスピードで登ってくる若者2人に抜かされた。さっきのテンバにいた人達だろうか。
ファニーパック一つで颯爽と大岩を越えていく。
周囲の木々が低くなり、風を感じるようになってきた。
ウェアが濡れ過ぎてメリノウールといえどかなり汗冷えする。
しかもウール100%のものを選んでしまったので乾く気配がない。
歩きながら、あっちのベースレイヤーにすれば良かったなとか、〇〇のインサレーション持ってくれば良かったなとか、所有しているウェアで最適解を考えてみる。
ちょっとした失敗もいい経験。
甲斐駒ヶ岳
13:20山頂到着。
辺りはガスに包まれて真っ白。
人気のルートということもあってしっかり整備されていたが、梯子、鎖場が多く足が疲れた。
岩陰に隠れ、風を凌ぎつつ小休止。
七丈小屋で汲んだ水で喉を潤す。雑味がなくて美味しい。
山域によって水の味が合わないことが稀にあり、そんな時のためにスティックタイプの粉末緑茶を常備しているが、今日は出番がなさそう。
出発直前、一瞬ガスが晴れた。
摩利支天
ここからは細かい砂礫地帯。
トレッキングポールを取り出し、滑らないように慎重に下っていく。
トレッキングポールは使わないこともあるけど、南アルプスのアップダウンを考慮して2本持ってきた。
今回は OHMI の Carbon Fiber Trekking Pole。
ショックアブソーバー付きのポールを使うのは十数年ぶりで、使い心地に少し不安があったが、全く違和感なく使えた。
むしろ、疲れて雑にポールを突いてしまっても衝撃を吸収してくれるのでとても良かった。
クッション付きのストラップ
細かいところも気が利いてる
この辺りはいくつか分岐があるせいか、踏み跡がはっきりしない。
周囲をよく見ると赤いプレートのマーキングがある。
方角は地図アプリを見て間違えないように、赤いプレートを辿っていく。
なかなかの標高差を一気に下る。
樹林帯に入っても大き目の石がゴロゴロしていて、一歩一歩足の置き場に気を使う。
コースタイムで1時間ちょっとの道だが、こういう道は苦手だ。
下りがだらだらと続くと集中力が落ちて転んでしまうことがよくある。
途中、小雨に降られたが樹林帯ということもあってさほど気にならず、レインは着ずに進む。むしろ暑いので、少し濡れるくらいの方が気持ちいい。
仙水小屋へ
15:30仙水峠。
山頂付近とは打って変わって、今度は谷にたまった岩塊地帯。
わずか数kmの範囲内で全く違う景色に。植生も地質もコロコロ変わって面白い。
ここまで来れば、今日のテンバまではあと少し。
ケルンを目印に歩いていく
15:50仙水小屋。
初日のテンバにようやく到着。
小屋泊の方は何人かいるそうだが、テント泊は僕一人。
時間も時間だし、この後増えることもないだろう。
30分も下ればもっと広い長衛小屋があるけど、静かなテンバが好きな僕としてはこっちの方がいいかな。
奥で新しい小屋を建設中
小屋で買ったビールを飲みながら、テンバでのんびり過ごす至福の時間。
この時間の為に、山へ行ってると言ってもいい。
2日目
2:30仙水小屋出発。
夜半、ふと目が覚めたらなぜか寝れなくなってしまい、たくさん寝たしいいか、と出発することに。
こじんまりとした落ち着くいいテンバでした
ありがとうございました
5:00大滝頭。
なかなかペースが上がらず、というか若干吐き気がするのと頭が痛い。
早めに出発しているので焦らずにしばし休憩。
後ろから登ってきていたハイカーに先を譲る。みなさん、仙丈ケ岳までのピストンだとか。
朝ごはん兼行動食用にもどしておいたアルファ米を食べながら一息つく。
少し落ち着いたところで、薬と水分も多めに取って再出発。
少し上がるときれいな朝焼け。
この何とも言えない、グラデーションがかかったきれいな色合い。
何回見ても最高。
ガレ場の急登が続く
焦らずゆっくり登る
6:00小仙丈ケ岳。
薬が効いたのか、休憩したからか、いつのまにか頭痛も収まり吐き気も無し。
これなら問題無く歩けそう。
風が結構強くて動いていないと寒い。
高山はすっかり秋の空気。
鼻をつく風が冷たくて心地良い。
左手には、日本の山標高1位2位3位がそろい踏み。いい眺め。
仙丈小屋で休憩しようと分岐を谷へ。
日陰に入ると一気に冷える。この区間だけで言えば体感温度は0℃に近い。
温かい物が食べたくなり、足早に小屋へ。
到着するもタイミングが悪く、これから清掃の時間ということで食堂が使えず。
外で食べても冷えていくだけだし、諦めて、行動食だけ食べて休憩を済ませた。
南アルプスの女王
7:30仙丈ケ岳。
天気は快晴。だけど風が冷たいので長居はせず、そそくさと次のピークへ。
8:00大仙丈ケ岳。
風が落ち着いたので山頂で休憩。
先に到着していたソロハイカーとおしゃべり。
滋賀から来たとのことで、南アルプスのアクセスがどうのこうの、高速代がいくらで・・・それなら夜行バスの方が・・・と交通費の話に。
関西住まいのハイカーの悩みは皆さん一緒のよう。年に何回もアルプスに行けないしね。
仙丈ヶ岳より標高の低い大仙丈ヶ岳
仙塩尾根
滋賀県ハイカーさんとは別れて、ここからはひとり仙塩尾根へ。
標高2500mはあるはずだが、樹林帯が続く。
森の中を歩くのが好きな僕としては嬉しい限りだが、巻道はなくしっかりアップダウンがある。
すでに7時間以上は行動しているから、疲労感もそれなり。
途中、地図アプリを見て現在地が分かってしまうと「まだたったこれしか進んでない・・・」と気が滅入っていたので、もう見るのをやめた。
ただ、アプリを見ないと決めたものの、今度はいつまでも代わり映えしない景色に「あれ?ここさっき通らなかったっけ?」と無限地獄に落とされたような気持ちに。
結局、地図アプリを見ようが見まいが、どのみち辛いのだ。
これは修行だ、と腹をくくり黙々と歩く。
高望池の水場
14:00三峰岳。
長いと噂には聞いていた仙塩尾根。
本当に長かった・・・。
いや、正確にはまだ半分程しか歩いてない。塩見岳までコースタイムで6時間はある。
本当に、本当に長いな・・・。
岩場の尾根を下っていく。
冷たい風が強く吹き、ガスも濃くなってきた。
今にも雨が降り出しそうだ。
ずぶ濡れになる前にテントの設営は済ませたいな、と今日のテンバへ急ぐ。
熊ノ平
15:00 熊ノ平小屋。
今日もテンバは貸切だろうと思っていたら、小屋の真下で学生グループが大型テントを設営していた。
僕は、少し離れたところにテントを張った。
目の前には農鳥岳がそびえ立つ。
雨は杞憂だったようで、少し晴れ間も見えている。
小屋番の方へ明日の天気を伺うと、午後からはかなりの雨量とのこと。
出発前の予報でも3日目の夜は雨予報だったが、雨はさらに悪化したようだ。
そこで僕は計画を変更し、農鳥岳は諦め、午前中のうちに北岳を越え明日中に広河原へ下山することにした。
当初の計画より一日半程短い山行になるが仕方がない。
3日目
3:30出発。
ヘッドライトを点け、昨日下ってきた岩稜帯を登り返す。
一度通ってはいても、昼間と印象は全く異なる。
マーキングを見逃さないように、慎重に足を進める。
気温は10℃ほどあるが、とにかく風が強い。風速10m/s以上はありそうだ。
レインジャケット越しに冷気を感じる。
極力立ち止まらず、ゆっくりでも動き続ける。
しばらくすると徐々に空が明るくなってきた。
富士山と農鳥岳
爆風の稜線
6:00間ノ岳。
ピークには着いたが寒くてじっとしていられない。
次の山小屋、北岳山荘までコースタイムで1時間ちょっと。とにかく動き続けて体温維持することを最優先に。
出発直前に入れたレインミトン
これがなかったら朝方の岩尾根通過は無理だった
途中、仙丈ケ岳と名前は分からないが南の山にも笠雲がかかっているのが見えた。
このあと、南アルプスはほぼ全域で大荒れだろうか。
北岳も荒れ模様
7:00北岳山荘。
時間的にはかなり余裕があるから、小屋で朝ごはん休憩。
軽食は時間外なのでカップラーメンを食べる。温かい食事が身体に染みる。
食べながらこれから向かう山頂方向を見てみると、ガスが薄くなってきている。
小屋着前のガスの掛かり具合では、少し不安もあったが今なら行けそう。
急いで身支度を済ませ、北岳山頂を目指す。北岳山荘からなら目と鼻の先だ。
白根の最高峰
8:40北岳山頂。
日本の標高第二位の北岳に到着。
昨日、一昨日と歩いた甲斐駒ヶ岳、仙塩尾根が綺麗に見える。
晴れてくれて本当に良かった。
名残惜しいが、この後は悪天候の予報。
早めに下山してしまおう。
北岳肩の小屋
ここからは草すべりのルートで白根御池小屋へ向かう。
標高を下げるにつれてだんだん暑くなってきた。ここも細かい砂礫地帯で滑りやすい。
さらに、地道に長い。ダラダラと下っていく。
幸い、転ぶようなことはなかったがやっぱり長い下りは苦手だ。
白根御池小屋
下山
12:20広河原山荘。
次のバスは14:00。シャワーを浴びて昼ごはんを食べるにはちょうどいい時間。
シャワー室を出て、山荘へ向かっているとポツポツと雨が降ってきた。
どうやら下山のタイミングもバッチリだったようだ。
今回、農鳥岳には行けなかったがいい山旅だった。
稜線から見えた遥か遠くまで続く南アルプスの山並みと深い森。
もっともっと歩いてみたい。
この続きはまたいつか。