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はじめに:食事も「装備」のひとつ

今回は、食事にまつわる話。


軽量装備で山へ行こうと考えたとき、ベースウェイト(水、食料、燃料など消耗品を除いた重さ)を計測する人は多いと思います。

でも、"食料の重さ"を意識したことはありますでしょうか?



食事は山行中の楽しみの一つ。

美味しいものを食べたいという気持ちは当然ですが、欲張りすぎるとあっという間に荷物が重たくなります。


 

僕も以前、3泊4日の山行でパウチのカレーやパスタソース、お酒を詰め込んでいったことがあります。

結果、食料だけで約3kg。

山行自体は予定通り終えましたが、途中で胃腸の調子を崩し、食欲が出ず、減らない食料の重さに苦しめられました。


 

そんな経験をきっかけに、「軽くても満足できる食事システム」を考えるようになりました。

ここでは、僕が実際に夏山テント泊で使用している軽量化のための食事システムをご紹介します。


これが正解というものではなく、ひとつの方法として読んでみて下さい。

 





ポイント① 火器燃料の使用回数を減らす

ーー「お湯を沸かす回数」が軽さを決めるーー

 

僕の山行では、火器を使うのは1日2回。朝と夜だけ。

日中は行動食や山小屋の軽食で済ませるようにしています。

 

 

この「回数を減らす」という考え方は、軽量化の基本。

燃料の消費量が減るだけでなく、持っていく燃料の量そのものも減らせます。

 

 

後ほど出てきますが、固形燃料やアルコールストーブを使う場合は、「必要な分だけ持つ計画性」が軽さに直結します。




ポイント② パッケージをアイラップに変更する

ーー軽く・小さく・片付けも楽にーー

 

メインの食事は定番のアルファ米をベースにしています。

それを一つ一つ開封してアイラップに入れ替えていきます。



パッケージと付属のスプーンで11g

 

ちなみにアイラップとは

岩谷マテリアルから販売されている、湯煎が可能なマチ付きのポリ袋です。

種類がいくつかあり、スーパーやドラッグストアなどで購入できます。



見た目が分からなくなるので、味や必要なお湯の量などをマスキングテープに書いて貼っておくと便利です。



予備でスプーンを一つだけ入れています



この一手間でパッキングがぐっと楽になります。

パッケージって意外とかさばりますよね。

食後のゴミも最小限になるのでザックの中もすっきりします。



ポイント③ "ちょうどいい"が気持ちいい

ーークッカーは「必要十分」で選ぶーー


1回の食事に必要なお湯の量は、160〜300mlほど。

それだけ作れれば、アルファ米にプラスしてスープやコーヒーも楽しむことができます。

 

僕はエバニューの400FDを使っていますが、この小ささで十分。

先日の南アルプスの山行でも不便は感じませんでした。

 


山では「大は小を兼ねる」は通用しないと思っています。

“必要十分”なサイズを選ぶことが軽量化のコツ。

結果として、クッカーも収納もシンプルになり、パッキングが気持ちいいほどまとまります。


 

ポイント④ "軽さ"は燃料から始まる

ーーガス缶を卒業してみるーー


燃料を見直すのも、軽量化には大きな効果があります。

ガス缶(110サイズ)は中身が空でも100g以上。

 

南アルプスの山行を例にあげると、アルコール15mlで300mlのお湯が作れるストーブを使い、

1泊につき使うアルコールは15ml×2(朝と夜)=30ml

3泊なので30ml×3泊=90ml

予備分を追加して120ml

燃料ボトル込みで130g

ガスからアルコールへ変えるだけで100g程の軽量化が可能です。

 

ガスの方が便利ではありますが、お湯が作れればいいですし、湯沸かしの時間すら短縮したい!というようなシビアな山行計画でもなければ必要十分。




ポイント⑤ 保温コジーで温かさと効率を両立

ーー"軽くても美味しく"を支える脇役


アルファ米を食べていて、「芯が残って微妙に硬い」と感じたことはありませんか?

そんなときに活躍するのが保温コジーです。

僕は暖かさをキープするためというより、仕上がりムラを減らすために使っています。

アイラップにお湯を注いで、ジップロックごとコジーに入れて放置。

その間にスープや飲み物の準備ができ、燃料も節約できます。




このシステムの場合、カトラリーは持ち手が長いものが食べやすくおすすめです。



僕はアルファ米をよく使いますが、湯戻しで食べられるものならなんでもいいので、カレーメシでもいいですし、大豆肉や乾燥野菜などを加えて自分好みにアレンジするのもいいと思います。




僕は保温コジーという道具が結構好きで、いくつか持っているのでご紹介します。


表示はジップロックSサイズを追加した重量


左から、タイベックとアストロフォイルを使った山旅のスタンドコジー、中綿にシンサレートを使ったHMGのリパック、岩崎工業の500ml深型スクリュートップキーパー


南アルプスでは軽いことを最優先にしたので、スタンドコジーを使いましたが、一番好きなのは右のスクリュートップキーパー。


そもそもは、野菜などの保存容器として日常生活で使っていたフードコンテナ。

数年前にキッチンの戸棚から見つけて以来、山道具として活躍してます。


ハードケースなので持ちやすくて食べやすいのと、汁物も作れる万能容器。


縦型のフードコンテナならザックのサイドポケットに仕舞いやすいので、ナッツなど砕けやすい行動食を入れる容器としても使えます。


銀色の保温カバーは100均の銀シートを使って自作しました。結露対策とか、お風呂の蓋に乗せて保温性を上げたりするアレです。

スクリュートップキーパーも数百円でどこでも買えるので、コストパフォーマンスも優秀です。


身近なものを山道具に転用するのも軽量化へのポイント。



まとめ: 軽さの中に"発見"がある

 

今回紹介した食事システムをまとめると、以下の5つのポイントになります。



ポイント①火器燃料の使用回数を減らす

ポイント②パッケージをアイラップに変更する

ポイント③ "ちょうどいい"が気持ちいい

ポイント④ "軽さ"は燃料から始まる

ポイント⑤ 保温コジーで温かさと効率を両立



これらのうち、どれかひとつでも取り入れるだけで、食事システムは確実に軽くなります。

僕が南アルプスで背負った食料重量は、3泊4日分で約1.8kg。

以前の半分ほどまで減らすことができました。

 

もちろん、軽くすることで不便になる部分もあります。

でも、その“不便さ”が新しい発想を生み出したり、自分のスタイルを磨くきっかけになる。

 

荷物を軽くすることは、我慢ではなく「快適さの再定義」だと思っています。

その感覚を共有できたら嬉しいです。


食事もまた、立派な「装備」のひとつ。

これを読まれた方、ぜひご自身の食事システムを見直してみてください。